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【記紀歌謡の好古座談��-� ‖膸骸蕁覆�おやまもり）】
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知波夜夫流（ちはやぶる）宇遲能和多理邇（うぢのわたりに）佐袁斗理邇（さをとりに）
波夜祁牟比登斯（はやけむひとし）和賀毛古邇許牟（わがもこにこむ）
大山守『古事記（応神）歌謡50』
知破揶臂苔（ちはやひタ）于旎能和多利珥（うじのわたりに）佐烏刀利珥（さをとりに）
破揶鶏務臂苔辭（はやけむひタし）和餓毛胡珥虛務（わがもこにこむ）
大山守『日本書紀（仁徳）歌謡42』
記（応神）の説明では、「大山守が宇治川の中ほどに渡って来た時に、船頭（宇遅能和紀郎子）はその船を傾けさせ、大山守を水の中に落とし入れてしまった。
ところが間もなく水面に浮かび出て、水の流れに従って流れ下った。
そして流れながら歌った」とある。
ちはや−ぶる 【千早振る】：荒々しい「氏（うぢ）」ということから、地名「宇治（うぢ）」にかかる枕詞。
わたり 【辺り】：付近。あたり。
さお‐とり【棹取り】：舟の棹を操ること。かじとり。
【斯】：［音］シ（呉）（漢）［訓］これ・この・かく
もこ【婿】： 相手。仲間。
ちはやぶる 宇治の辺（わた）りに 棹取りに 早けむ人か わが婿（もこ）に来む
（流れのはやい宇治の辺りだが、棹取りに最も早い人にこそ、わが婿にしょう）
紀（仁徳）の説明は、「太子（菟道稚郎）は粗末な麻の服をつけられて、こっそりと渡し守にまじられ、大山守皇子（ミコ）を船に乗せて漕ぎ出された。
河の中程に至って、渡し守に船を転覆させられた。
大山守皇子は河にはめられてしまった。
水に浮き流れながら歌った」とある。
ほぼ同じ内容であるから、歌意も同じだと思うのだが、助けを求めているのに変わりがないはずである。
ところが、【臂苔】が（ひた）ではつながらない気がしてならない。
ちはや 【襷・褌・千早】：�，燭垢�。もと、巫女（みこ）の用いたものをいった。��巫女が神事に奉仕するときに着た服。白布で作る。
【臂】：［音］ヒ（呉）（漢）［訓］ひじ
【苔】：［音］タイ（漢）［訓］こけ
（ひ−た ）【引板】：鳴子（なるこ）。板に細い竹の管をぶら下げ、綱を引けば鳴るようにしたもの。[季語] 秋。
【烏】：［音］ウ（呉）オ（ヲ）（漢）［訓］からす・いずくんぞ
【鎖】［音］サ（呉）（漢）［訓］くさり・とざす
「記の歌謡を良しとしてみるなら、紀は（ちはやひた）としているが、本来なら（ちはやひと）と読ませたかったはずなのに、（ちはやひた）では、《巫女が打つように、鳴子が響いているぞ》、《宇治川の渡りに》《その鎖（さ）を捕って》《早来い、溺れ(浸し）そうだ》（われもこにこむ）《オーイ、タスケニコイ》なのだ。
助けを呼ぶのに、歌を詠んでいる場合ではないから、舟歌であるとしたら、（もこにこむ）は、「婿に来い」ということが自然かもしれない。
ところが大山守では、主役にはならないのだから、ここはやはり、宇遅能和紀郎子（うぢのわきのいらつこ）にかかわっているのであろう。
菟道稚郎子は、父応神天皇の寵愛を受けて皇太子に立てられたものの、異母兄の大鷦鷯尊に皇位を譲るべく自殺したという美談が知られる。
ただし、これは『日本書紀』にのみ記載された説話で、『古事記』では単に夭折と記されているのだ。
なお、『播磨国風土記』には郎子を指すとされる「宇治天皇」という表現が見られる。
これらの解釈を巡って、「天皇即位説」や「仁徳天皇による郎子謀殺説」に代表される、数々の説が提唱されている人物なのである。
とはいえ、菟道稚郎子は大山守をおぼれさせ、宇治の宮を守ったことになるのだが、【臂苔】の問題が頭にこびりついていたところ、景行天皇17年にも歌謡が残されていたのだ。
波辭枳豫辭（はしきよし）和藝幣能伽多由（わぎへのかたゆ）區毛位多知（くもゐたち）
區暮夜摩苔波（くぼキやまとは）區珥能摩倍邏摩（くにのまはらま）
多々儺豆久（たたなづく）阿鳥伽枳夜摩（あをかきやまニ）
許莽例屢（こもれるヤ）夜摩苔之（やまとノこれハ）于屢破試（うるはしキナリ）
はしきやし：ああ、いとおしい。ああ、なつかしい。ああ、いたわしい。「はしきよし」「はしけやし」とも。
くぼ・し 【凹し・窪し】：くぼんでいる。へこんでいる。中央が深い。
『倍』の字には少なくとも、倍（バイ）・ 倍（ハイ）・ 倍す（ます）・ 倍く（そむく）の4種の読み方が存在する。
【邏】：［音］ラ（呉）（漢）
『儺』の字には少なくとも、儺（ナ）・ 儺（ダ）・ 儺（おにやらい）の3種の読み方が存在する。
つまり、ハッキリと、【夜摩苔】（やまと）と訓んでおり、「苔」（たい）は、日本書紀の万葉仮名では、「ト」なのである。
いったいこのヤマトはどこから来たのかというと、『魏志倭人伝』の【邪馬壹國】である。
しかし【壹】は、壹（イン）・ 壹（イツ）・ 壹（イチ）・ 壹つ（ひとつ）の4種の読み方である。
これを【やまと】と呼んだ人物が、律令国家を成し遂げた大和朝廷の天武天皇より『帝紀』および上古の諸事（『本辞』『旧辞』など）を記し校定するよう命ぜられた、中臣 大島（？-693：漢詩人）であり、その夫人が比売朝臣額田（額田王？）なのだ。
つまり、【壹】に、万葉仮名【ト】を採用することにより、邪馬壹国と大和朝廷が結ばれたのである。
現存する三国志の版本では、「邪馬壹國」（新字体：邪馬壱国）と表記されているが、晩唐以降の写本での誤写だという。
つまり、「壹」が、【台】の旧字体「臺」に似ているというわけで、本来は、邪馬台国（やまたいこく）であるというわけである。
すなわち、【台〔臺〕】：（［音］ダイ（呉） タイ（漢） ［訓］うてな）なのだが、これを万葉仮名で（ト）と訓んだ人物がいるってわけ。
というよりも、魏志倭人伝の「邪馬壹國」を、どうしても（やまとこく）と呼ぶ必要に駆られていたのだ。
夜麻登波（やまとは）久爾能麻本呂婆（くにのまほろば）多多那豆久（たたなづく）阿袁加岐（あをがき）夜麻碁母禮流（やまこぼれる）夜麻登志宇流波斯（やまとしうるはし）【『古事記』ヤマトタケルの歌】
夜摩苔波 區珥能摩倍邏摩 多々儺豆久 阿烏伽枳 夜摩許莽例屢 夜摩苔之于屢破試【『日本書紀』父景行天皇の歌】
タケルは、三重県の能褒野（のぼの）で歌っているのだが、景行天皇では、宮崎県の子湯縣（こゆのあがた）で歌わせているのだ。
これは明らかに意図があってのことで、つまり、書紀は『邪馬壹国』（魏志倭人伝）を意識し、歴史的にも、天武天皇が統治する、大和朝廷と結び付けたい意向があったと思われる。
しかもこのことは、事記の『応神天皇』（15代）、および書紀の『仁徳天皇』（16代）における、日向（宮崎県）髪長姫のこととかかわりがあるのだ。
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きもち： 普通
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