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【記紀歌謡の好古座談�検，�ほさざきのみこと� �
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美知能斯理（みちのしり）古波陀袁登賣袁（こはだをとめを）迦微能碁登（かみのごと）
岐許延斯迦杼母（きこへ（エ）しかども）阿比麻久良麻久（あひまくらまく）大雀命『古事記 応神記 記歌45』
彌知能之利（みちのしり）古破儾塢等綿塢（こはノをとめを）伽未能語等（かみのごと）
枳虛曳之介逎（きこへ（エ）しゾかし）阿比摩區羅摩區（あひまくらまく）
大鷦鷯尊『日本書紀 応神紀 紀歌37』
業績から聖帝（ひじりのみかど）と称され、その治世は聖の世と称えられている一方で、記紀には好色な天皇として皇后の嫉妬に苛まれる人間臭い一面も描かれている仁徳天皇（第16代）が、まだ皇太子のころ、父の応神天皇（第15代）が呼び寄せた日向の髪長媛と出会い、ひとめぼれをし、髪長媛を譲られた時の歌である。
【記において】
応神天皇は、日向国（ひむかのくに）の諸県君（もろあがたのきみ）の娘で髪長比売（かみながひめ）という名の少女が、その容貌が端麗であるとお聞きになって、お側仕えをさせようとしてお呼び寄せになった。
そのとき、皇太子の大雀（おおさざき）は、その少女の船が難波津（なにわづ）に着いたのを見て、少女の容姿の整って美しいのに感動し、すぐに武内宿禰（たけしうちのすくね）の大臣に頼んだ。
「あの日向から呼び寄せになった髪長比売を、天皇の御許（みもと）にお願い申して、私に下さるようにしてくれ」
そこで武内宿禰の大臣が、天皇のお許しを願うと、天皇はただちに髪長比売をその御子にお与えになった。
【紀において】
秋九月中旬、髪長媛は日向からやってきた。
摂津国の桑津邑（くわつのむら）に置かれた。
皇子の大鷦鷯尊（オオサザキノミコト）は、髪長媛をご覧になり、その容貌の美しさに感じて、引かれる心が強かった。
天皇は大鷦鷯尊が、髪長媛を気に入っているのを見て、娶合わせようと思われた。
ここで、記紀の歌謡をあわせて、整えてみようと思う。
美知能斯理[彌知能之利] 古波陀袁登賣袁[古破儾塢等綿塢］
迦微能碁登[伽未能語等] 岐許延斯迦杼母[枳虛曳之介逎]
阿比麻久良麻久[阿比摩區羅摩區]
【斯】：［音］シ（呉）（漢）［訓］これ・この・かく
【弥〔彌〕】：［音］ビ（漢）ミ（呉）［訓］や・いや・いよいよ
『之』の字には少なくとも、之（シ）・ 之く（ゆく）・ 之（の）・ 之（これ）・ 之の（この）の5種の読み方が存在する。
【陀】：［音］ダ（呉）タ（漢）
『袁』の字には少なくとも、袁（オン）・ 袁（エン）の2種の読み方が存在する。
『賣』の字には少なくとも、賣（メ）・ 賣（マイ）・ 賣（バイ）・ 賣（バ）・ 賣れる（うれる）・ 賣る（うる）の6種の読み方が存在する。
【儾】：[音］ドウ・ノウ
『塢』の字には少なくとも、塢（オ）・ 塢（ウ）の2種の読み方が存在する。
【微】：［音］ビ（漢）ミ（呉）［訓］かすか
『許』の字には少なくとも、許（コ）・ 許（ク）・ 許（キョ）・ 許す（ゆるす）・ 許（もと）・ 許り（ばかり）の6種の読み方が存在する。
『延』の字には少なくとも、延（エン）・ 延く（ひく）・ 延え（はえ）・ 延べる（のべる）・ 延びる（のびる）・ 延ばす（のばす）の6種の読み方が存在する。
『杼』の字には少なくとも、杼（チョ）・ 杼（ジョ）・ 杼（ショ）・ 杼（ひ）・ 杼（どんぐり）・ 杼（とち）の6種の読み方が存在する。
『枳』の字には少なくとも、枳（シ）・ 枳（ギ）・ 枳（キ）・ 枳（からたち）の4種の読み方が存在する。
【虚】：［音］キョ（漢）コ（呉）［訓］むなしい・うそ・そら・から・うつけ・うつろ・うろ
【曳】：［音］エイ（呉）（漢）［訓］ひく
『逎』の字には少なくとも、逎（シュウ）・ 逎い（つよい）・ 逎い（ちからづよい）・ 逎る（せまる）の4種の読み方が存在する。
というわけで記45を読み下すと
道の後 こはた乙女を 神のごと 聞こえしかども 相枕まく
（はるばるとやってきた 此波多の乙女を、神々しくも畏れ多かったけれど、共寝したんだよなぁ）
「先に述べた、日向の諸県君牛諸（うしもろ）の娘である髪長比売と結婚してお生みになった御子は、波多毘能大郎子（はたびのおおいらつこ）でまたの名は大日下（おおくさか）王という。
つぎに波多毘能大郎子（はたびのおおいらつこ）で、またの名は長目比売（ながめひめ）命、またの名は若日下部（わかくさかべ）命の二柱である」
（こはた）とは【此波多】のことであり、だと思う。
波多の地名は日本各地に分布しており、日向方面の具体的な地名としては、肥前国松浦郡波多村や肥後国天草郡波多郷があり、また、「波多」を氏の名とする氏族として、武内宿禰の長男である波多八代宿禰（はたのやしろのすくね）を祖とするとある。
みち‐の‐しり【道の後／道の尻】：昔、都から下る道中の地方を二つまたは三つに分けたときの、最も都から遠い地方。
ま・く 【枕く】：�）蹇覆泙�ら）とする。枕にして寝る。��共寝する。
続いて、紀37を読み下すと、
道の尻 此はの乙女を 神のごと 聞こえし（ゾ）かし 相枕まく
こ‐は【此は】：これは。これはまあ。多く、疑問・感動の気持ちを表すときに用いる。
終助詞「かし」：『念押し』〜よ、〜ね
「事記の古波陀（こはた）と書紀の古破儾（こはの）で、当時、どのような違いを生じさせたのか想像もつかない」
「此波多は出自を明らかにしてはいるが、こーは 【此は】は分類連語で、”この噂の乙女を”というような調子なのかも」
「それでは、記紀の表現が逆転したかのように、書紀に感情を高ぶらせているのではないか？」
「しかも、書紀の4句目を（きこへしゾかし）とゾを詠み入れたりして、『念押し』してるんよ」
「父応神と太子仁徳との関係、あるいは立場を明らかにしょうとしたのでしょうか？」
「ところでこの物語は、記の歌謡では、43（天皇）からはじまり、44（天皇）・45（太子）を経て、46（太子）まで続くのだ」
「いっぽう紀の歌謡は、35（天皇）で引き合わせの儀があり、そして36（太子）・37（太子）・38（太子）では独壇場の3連続である」
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きもち： 普通
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